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また、「未婚」と「非婚」、「非婚姻」と「事実婚」、「一人親家族」と「片親家族」などの定義も、プラグマティックに使用するものである。結婚する前あるいは婚姻関係がないままに子どもを生めば普通未婚の母親と呼ばれるが、婚姻関係になくともカップルが同居し家族形成をしている場合は非婚の母親と呼ぶものである。また、同じ非婚姻関係の同居でも長期的にわたり婚姻による共同生活ならびに家族形成と変わらない場合は、事実婚カップル/家族と呼ぶものである。試験的なあるいは短期間のカップル同居に関しては単に、非婚姻カップル・非婚姻同居と呼ぶものである。また、婚姻関係にあるカップルの解消のみを離婚と呼び、非婚姻関係にあるカップルの場合はカップル解消と呼ぶものである。家族解消という場合は、両方を包括するものである。
一人親ならびに片親家族も、最初から一人親をライフ・スタイルとして選択する家族形態と、死別や離別によって片親家族を形成する場合とがある。「初子」と「第一子」も、同意義語として使用するものであり、「出生率」は断りのないかぎり、「合計特殊出生率」を意味する。
本書は多くの数量的データを利用するものであるが、正しく読み取るには、数字の増減を無条件に比較するのではなく、問題(たとえば離婚)の質(構造的要因)を数字にたえず対応させる方法的姿勢が必要である。問題現象のもつ意味とその社会的背景を関連づける作業とともに、個別的問題の集積としてのデータの質を認識することが、歴史的変動を分析するうえで大切な視座だと考えるものである。また、日本のデータと比較するにあたっても、両国の変動を歴史的なコンテクストに位置付ける努力をしながら、理解・比較をすることが必要である。そうでなければ、離婚が多いか少ないか、増えているか減っているかという現象的理解に終わり、問題の本質と変動が結びつかないであろう。この関連が明確にならないかぎり、両国間の比較も増減の無条件比較にとどまり、離婚が少ない社会の方が家族危機が深刻でないという、短絡的な結論になりかねないであろう。
最後に、基本的な資料収集を手伝ってくれた、ストックホルム大学社会福祉学部修士課程に在学中のMagnus Jegermalm君にあらためて謝意を表するものである。
この報告書が、日本社会の少子化問題、ひいては高齢化社会や家族問題を考えるうえで何らかの役にたち、いくつかの問題提起ができれば幸いである。日本の家族は何だったのか、そしてどこからきてどこに向けて歩もうとしているのだろうか?
Stockholm 1997年1月
訓覇法子
ストックホルム大学
社会福祉学部大学院研究員

 

 

 

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